はじめにお断り: この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の方への投資助言ではありません。「こうすべきだ」という行動の指示ではなく、一般的に検討される確認項目の整理です。どのように行動するかは、ご自身の状況に照らして、最終的にご自身で判断してください。

このブログでは、これまで新NISAとiDeCoの違いや証券口座の選び方など、「平常時にどう考えるか」という話を中心に書いてきました。ただ、書きながらずっと引っかかっていたことがあります。読んだ方が本当に困るのは、たぶん平常時ではなく、相場が大きく下がった日の夜なのではないか、ということです。

投資家向けの調査を見ていても、情報そのものは豊富にあるのに「自分の状況でどう考えればいいか」まで落とし込めない、という声はよく指摘されます。私自身、過去に大きな下落を経験したとき、頭では「長期で持つ」と分かっていながら、口座の画面を何度も開き直していた覚えがあります。そのとき欲しかったのは、「こうしなさい」という指示ではなく、「いま何を確認すればいいのか」という手がかりでした。今回はそれを、自分のノートに書き留めるつもりで整理してみます。

下落の程度別に、よく挙げられる確認項目

以下の数値はあくまで目安で、区切りに根拠があるわけではありません。「この幅ならこの項目」と機械的に当てはめる診断のようなものではなく、下落が深くなるにつれて確認の焦点が移っていく、という緩やかな流れとして読んでいただければと思います。

目安10%程度の下落

このくらいの幅は、長く投資を続けていれば年に一度程度は目にする範囲だと言われます。この段階で挙げられることが多いのは、当初決めた資産配分(現金・株式・投資信託などの持ち方の割合)や投資の目的からズレていないかを見直す、という観点です。値動きそのものより、「自分は何のために、どのくらいの割合で持つと決めていたか」を思い出す機会として使う人が多い、と感じています。

目安20%程度の下落

この幅になると、含み損(売却しなければ確定しない、評価上のマイナス)の金額が生活の実感として重く感じられ始めます。ここでよく挙げられるのは、「保有し続ける前提だった期間」と「積立を続ける体力」に変化がないかを確認する、という観点です。相場の話というより、自分の収入や家計に変化がなかったかを確かめる作業に近いのだと思います。

目安30%程度の下落

ここまで来ると、「売るか、持ち続けるか」という問いが頭を占めるようになります。ここでも大事なのは特定の答えを出すことではなく、急いで結論を出さない人が多い、という観察にすぎません。あわせて、近いうちに生活資金として必要になるお金と、長期で置いておけるお金を分けて考える、という整理もよく語られます。どちらの性格のお金で持っていたかによって、同じ下落でも意味合いが変わってくるからです。

生活費が必要になった場合

相場と関係なく、収入の減少や急な出費で現金が必要になることもあります。この場合、投資を続けることより現金を確保することを優先して考える人が多い、というのが一般的な見方だと思います。相場の回復を待つより先に、生活が回るかどうかが問われる局面です。

目安10%程度の下落 資産配分・投資目的からのズレを確認 目安20%程度の下落 保有し続ける前提の期間・ 積立を続ける体力の変化を確認 目安30%程度の下落 生活資金と長期資金の 区分を確認 (相場と関係なく生じる、別のケース) 生活費が必要になった場合 現金の確保を優先して考える 人が多い、という見方

下落の程度に応じて確認の焦点が移っていく流れ(生活費が必要になった場合は相場とは別に生じる独立したケース)

「暴落したら買い増し」という単純化について

ここまでの確認項目は、あくまで「何を見直すか」の入り口です。実際に「買い増すかどうか」まで踏み込もうとすると、よく目にする言葉があります。「暴落は買い場」「安いうちに買い増し」というものです。長い目で見ればそういう結果になった時期があるのは事実ですが、私はこの言葉を一律の正解として受け取るのは危ういと感じています。

同じ下落でも、余裕資金が十分にある人と、来年の学費や引っ越し費用を投資に回していた人とでは、取れる選択肢がまったく違います。追加で投資できる現金がどれだけあるか、そのお金はいつ使う予定のものか。この二つによって、「買い増す」という行動の重みは別物になります。さらに、下落がどこで止まるかは誰にも分かりません。「安くなったから買う」は、その後さらに下がる可能性を引き受ける判断でもあります。

同時に、買い増さないという選択にも別の性質のリスクがあります。その後相場が回復したとき、買い増さなかったことを後から惜しく感じる人もいます。買う側にも買わない側にも、それぞれ別の形の「その後」が待っている、という点は変わりません。

だからこの記事では、「買い増すべき」とも「買い増すべきでない」とも書きません。一律の答えがないこと自体が、この局面のいちばん大事な前提だと思っています。

私自身がこれまでの変動で考えてきたこと

金額や銘柄の話は控えますが、心構えの話だけ短く添えておきます。

私が過去の下落で一番強く感じたのは、下がっている最中に考えごとをしても、まともな判断にはなりにくい、ということでした。画面の赤い数字を見ながら決めたことは、あとで振り返るとたいてい「その場の感情」に引っ張られていました。そこで私は、相場が落ち着いているうちに「どこまで下がったら何を確認するか」を紙に書いておく、という方法に落ち着きました。生活防衛資金が何か月分残っているか、といった項目もその一つです。上に書いた確認項目は、私のその紙を一般化したものでもあります。

もう一つの気づきは、確認して「何もしない」と決めることも、ひとつの判断だということです。もちろん、状況が変わったのに気づかないまま何もしないでいるのは別の話ですが、事前に決めた方針と照らして変える理由がなければ、動かないのは怠慢ではなく選択なのだと、いまは思っています。

おわりに

相場が大きく動いたとき、正解を教えてくれる記事はたぶん存在しません。この記事でも「買い増すべきか」のような核心的な問いにあえて結論を出していませんが、それは逃げているのではなく、答えが人によって違う以上、一つの答えを示すことの方が無責任だと感じているからです。ただ、「次にどうすればいいか」を自分で決めるための材料は、平常時のうちに持っておけるはずです。この記事が、その材料の一つになれば幸いです。

免責事項: 本記事は、一般的な情報提供および考え方の整理を目的としたものであり、特定の金融商品・銘柄の売買を推奨するものでも、特定の方への投資助言でもありません。記載した確認項目は一般的に語られる観点の紹介であり、実際に取るべき行動を示すものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。実際の判断は、ご自身の資金状況や目的をふまえて、ご自身の責任で行ってください。サイト全体の運営方針・免責事項はこちらもあわせてご覧ください。