資産形成の本や動画を見ていると、投資信託とETFという言葉が並んで出てきます。どちらも、たくさんの銘柄をまとめて買える商品と説明されるので、どこがどう違うのか、最初はよく分かりませんでした。私も、ETFは投資信託の上位互換で詳しい人が使うもの、というくらいのぼんやりした印象しか持っていなかったのです。
けれど腰を据えて眺めてみると、この二つは中身よりも、買い方と持ち方に違いが集まっている商品です。今回はその違いを、できるだけ断定を避けながら、自分のノートに書き留めるつもりで整理してみます。
なお、ここに書く数字は2026年9月時点で金融庁や日本取引所グループ、各運用会社の公表資料等を確認したものですが、コストや対象商品の本数は今も動いている途中です。読まれる時点で変わっている可能性がある点は、先にお断りしておきます。
こんな方に向いています
- 投資信託とETFの違いが、なんとなくしか分かっていない
- ETFのほうがコストが安いと聞いたが、本当かどうか自分で確かめたい
- 新NISAやiDeCoで、どちらを使えるのかを整理しておきたい
1. 投資信託とETFは対立ではなく入れ子の関係
意外に思われるかもしれませんが、ETF(上場投資信託)は、法律の上では投資信託の一種です。「投資信託及び投資法人に関する法律」に基づく投資信託でありながら、証券取引所に上場していて、株式と同じようにリアルタイムで売買できる。それがETFです(日本取引所グループの解説による)。
つまり、投資信託とETFを対立する二つの商品として考えると、少しずれてしまいます。正確には、投資信託という大きな枠の中に、上場していない投資信託と、上場しているETFがある、という入れ子の関係です。この記事では便宜上、前者を「投資信託(非上場)」、後者を「ETF」と呼び分けることにします。
投資信託とETFは対立する2つの商品ではなく、投資信託という枠の中にETFも含まれる入れ子の関係です
中身が似た指数に連動する商品であれば、運用の考え方そのものは近い。違いは主に、どこで・どうやって・いくらから買えるか、そして持っている間の扱いに現れます。
結論を先に言うと、少額から積立を始めたいだけなら投資信託(非上場)を選んでおけば大きく外れることは少なく、ETFはリアルタイムでの売買や特定の指数への一括投資をしたくなったときの選択肢として、後から検討すればよい、というのが私なりの整理です。詳しくは5節で展開しますが、迷わないための着地点として、先にこれだけ置いておきます。
2. 投資信託(非上場)は、値段を知らずに注文する仕組み
投資信託(非上場)は、証券会社や銀行を通じて、運用会社から直接買う形の商品です。取引の特徴はブラインド方式と呼ばれるもので、注文を出す時点では、いくらで約定するかが分かりません。ここで価格にあたるのが基準価額で、ファンドが保有する資産の時価から費用を差し引き、1万口あたりの値に直したものです。基準価額は1日1回だけ算出され、公表は翌営業日になるのが一般的です(金融経済教育推進機構「投資の時間」の解説による)。
裏を返せば、投資信託(非上場)はこの基準価額そのもので約定するため、取引所での需給によって価格が決まる場面が存在しません。後述するETFのような、市場価格と基準価額のずれは生じない、ということになります。
最初は、値段が分からないのに買うのかと戸惑いました。ただ、積立は将来の一時点の価格を狙い撃ちする取引ではなく、時間を分けて買い続ける取引です。当日の基準価額が分からなくても、長期で続ける前提なら支障は小さいと考えられます。100円や1,000円といった少額から買える証券会社が多く、毎月の積立金額も細かく指定しやすい。
持っている間のコストについても触れておきます。投資信託には信託報酬がかかります。信託報酬は、運用会社・販売会社・信託銀行に支払う年率の手数料で、基準価額から日々差し引かれるものです。ただし実際には、売買委託手数料や監査費用など、信託報酬には含まれない費用(いわゆる隠れコスト)も発生していて、これらを合算したものが実質コストと呼ばれます。実質コストは運用報告書で確認でき、商品同士を比べるときはこちらを見るのが実態に近い、とされています。
分配金の扱いも整理しておきます。投資信託(非上場)の分配金は、税務上、運用益から支払われる普通分配金(課税対象)と、元本の一部を払い戻す形の元本払戻金(特別分配金とも呼ばれ、非課税)に分けて扱われます。分配金再投資コースを選べば、普通分配金は税引後の金額で、元本払戻金は非課税なのでそのままの金額で、それぞれ手数料なしで同じファンドへ自動的に再投資されます。ただし、この再投資の仕組みは全てのファンド・コースに用意されているわけではないので、購入時にそのファンドの取り扱いを確認しておく必要があります。
3. ETFは、株式と同じ感覚で売買する仕組み
ETFは、取引所が開いている時間に、株式と同じようにリアルタイムで売買できます。指値注文も成行注文も使え、1日のうちに何度でも売買できる。今の価格を見て、自分で決めて買う、という感覚に近い商品です。
その代わり、購入は市場価格×1口が単位になります。銘柄によっては数千円から数万円程度のまとまった金額が必要になる場合があり、投資信託(非上場)のような、毎月3,000円ずつといった細かい積立設定はしにくい傾向があります(楽天証券・SBI証券の解説による)。
コストの構造も少し違います。ETFにも信託報酬と、それに含まれない隠れコストがあるのは投資信託(非上場)と同じですが、それに加えて、売買のたびに証券会社の売買手数料がかかります(ネット証券を中心に、一定の条件で無料化している例もあります)。
分配金の扱いも異なります。ETFには自動再投資の仕組みがなく、分配金は現金で証券口座に入金されます。再投資したいなら、自分で買い注文を出す必要がある。手間が一つ増える、と言い換えてもよいかもしれません。税務上は、ETFの分配金は一般に上場株式の配当と同様の扱いとされ、特定口座や一般口座で保有している場合は税率20.315%(所得税15.315%+住民税5%)がかかります。ただし、これは特定口座・一般口座での話で、NISA口座で保有していれば、投資信託(非上場)・ETFのどちらの分配金も非課税です。この点は5節であらためて触れます。
もう一つ、ETF特有のリスクとして価格乖離があります。取引所で付く市場価格と、保有資産から計算される基準価額(NAV)が、ずれることがあるのです。通常は、指定参加者(運用会社と契約して、ETFの設定・交換を担う証券会社)が、市場価格と基準価額の差を利用して利益を得る裁定取引を行うことで、この乖離は抑えられる傾向にあります。ただ、海外資産を組み入れたETFや、市場の動きが急な局面では乖離が広がりやすいとされています。
これは、読者自身の売買にも跳ね返る話です。乖離が広がっている局面でETFを買うと、市場価格が基準価額より割高になっている可能性があり、逆に売ると、割安で手放してしまう可能性があります。個人の積立目的で国内の主要指数に連動するETFを扱うなら、気にする場面は少ないと思いますが、海外資産を組み入れたETFを売買する際は、成行注文ではなく指値注文を使うと、乖離の影響を抑えやすいとされています。リアルタイムで売買できることの裏側には、こうした性質もあると知っておくと、落ち着いて眺められる気がします。
4. 違いを表で整理する
ここまでの内容を一覧にします。表の中に出てくる新NISAやiDeCoの対象本数は、次の5節で制度ごとに詳しく説明しますので、ここでは全体像だけ掴んでください。
| 項目 | 投資信託(非上場) | ETF(上場投資信託) |
|---|---|---|
| 定義上の位置づけ | 投資信託(非上場) | 投資信託の一種で、証券取引所に上場 |
| 取引方法 | 販売会社を通じて申込む | 取引所で株式と同様に売買(指値・成行可) |
| 約定タイミング | 1日1回の基準価額で約定(ブラインド方式) | 取引時間中にリアルタイムで約定 |
| コスト構造 | 信託報酬+隠れコスト(実質コストで比較) | 信託報酬+隠れコスト+売買手数料(証券会社により無料化あり) |
| 最低投資金額 | 100円や1,000円からの証券会社が多い | 市場価格×1口(数千円〜数万円程度になる場合も) |
| つみたて投資枠 | 対象の大半(363本中354本) | 対象はごく少数(363本中9本) |
| 成長投資枠 | 対象多数 | 対象あり(66本) |
| iDeCo | 対象商品に含まれる | 多くの運営管理機関で対象外 |
| 分配金の再投資 | 再投資コースがあれば自動再投資可 | 自動再投資なし(自分で買い直す) |
| 分配金の課税(特定口座・一般口座) | 普通分配金は課税、元本払戻金は非課税(一般的な整理) | 上場株式の配当と同様の扱い(税率20.315%、一般的な整理) |
| NISA口座で保有した場合 | 分配金・売却益とも非課税 | 分配金・売却益とも非課税 |
| 流動性・価格乖離 | 基準価額そのもので約定するため乖離は生じない | 市場価格が基準価額から乖離することがある |
対象本数の出典: つみたて投資枠は金融庁の対象商品リスト(2026年8月時点)、成長投資枠のETF本数は各運用会社の集計(2026年7月末時点)。本数は変動が速いため、いずれも執筆時点の値です。
コストについては、少し補足が必要です。「ETFは投資信託より必ず安い」と言われることがありますが、そう言い切れない実例があります。たとえば同じS&P500に連動する商品同士でも、ある投資信託(eMAXIS Slim米国株式)は2025年1月の改定後で実質コストが約0.089%(決算期・算出時点により0.08%台〜0.089%程度で幅があります)なのに対し、ある上場投資信託(MAXIS米国株式(S&P500)上場投信、銘柄コード2558)は2025年9月改定後の信託報酬が0.066%と名目上は低いものの、隠れコストを含めた実質コストは約0.133%になる、という逆転が起きています。ここでこれらの商品名を挙げたのは、信託報酬(名目の料率)だけを見て比べると判断を誤ることがある、という一点を示すためで、どちらが良い商品かという話ではありません。将来性や運用成績には一切触れませんし、その判断材料も持ち合わせていません。なお、ここで挙げた2本はたまたま実質コストの比較データが公表資料で確認しやすかったために選んだだけで、特定の運用会社を推す意図はありません。信託報酬と実質コストの逆転は、他の運用会社の商品同士でも起こりうる一般的な現象です。
売買手数料についても、ネット証券を中心に投資信託のノーロード化やETF売買手数料の無料化が進んでいる傾向はありますが、証券会社ごとに差があります。ご自身の使う証券会社の条件を確認するのが確実です。
こうして並べると、どちらのコストが安いかよりも、注文の時点で価格が分かるかどうか、少額で細かく積み立てられるかどうか、分配金が自動で戻っていくかどうか、といった違いのほうが、日々の付き合い方への影響としては大きいように見えます。
5. 目的別に考える——どちらが「合いやすい」か
先に断っておくと、金融庁や日本取引所グループといった公的機関の一次情報には、どちらが向いているかという推奨的な整理はありません。以下は、証券会社などの業界解説でよく見られる整理を、私なりに並べ直したものです。あくまで一般的な傾向であって、特定の商品を推す意図はありません。
少額から積立を始めたい、手間をかけたくない人
投資に慣れていない段階で、毎月決まった金額を淡々と積み立てたい場合は、投資信託(非上場)が合いやすい、という整理が一般的です。100円や1,000円単位で金額を決められ、分配金も再投資コースがあれば自動で再投資され、価格を見て悩む場面が少ない。考えることを減らしたい、という目的には、この仕組みが噛み合いやすいように思います。
リアルタイムで売買したい、まとまった額を一括で入れたい人
取引所が開いている時間に、自分で価格を見て指値で買いたい。あるいは、ある指数に連動する商品へ、まとまった金額を一括で投じたい。こうした場合はETFが合いやすい、と整理されることが多いようです。投資経験があり、分配金の再投資を自分で管理することを苦にしない人ほど、ETFの自由度を活かしやすい、という言い方もされます。
新NISAやiDeCoの枠で使いたい人
制度側の受け皿から考えると、違いがはっきりします。金融庁の公表(2026年8月時点)によれば、つみたて投資枠の対象商品は合計363本で、内訳は指定インデックス投資信託286本、それ以外の投資信託68本、ETF9本。ETFはごく少数派です。一方、成長投資枠ではETFも一定数(66本、2026年7月末時点、運用会社集計)が対象になっています。iDeCoについては、iDeCo公式サイトの説明によれば、対象商品は投資信託と元本確保型商品(保険・定期預金)が中心です。ETFは多くの運営管理機関で対象に含まれていませんが、取り扱う商品はご自身が使う運営管理機関(金融機関)によって異なるので、詳細は加入先で確認するのが確実です。
つまり、つみたて投資枠やiDeCoを主に使うのなら、実質的に投資信託(非上場)が中心になり、成長投資枠も使うなら、そこでETFという選択肢が視野に入ってくる、という順番になります。なお、NISA口座で保有している間は、投資信託(非上場)・ETFのどちらであっても、分配金と売却益は非課税です。
分配金の扱いを気にする人
まず前提として、ここから書くのは特定口座や一般口座で保有する場合の整理です。NISA口座で保有していれば、投資信託(非上場)・ETFいずれの分配金も非課税になるので、以下の区別を気にする必要はありません(海外ETFの分配金については、現地での源泉徴収が残る場合があります)。
特定口座・一般口座で保有する場合、投資信託(非上場)の分配金には普通分配金(課税対象)と元本払戻金(特別分配金、元本の払い戻しにあたり非課税)という区別があるのに対し、ETFの分配金は一般に上場株式の配当と同様の扱い(税率20.315%、所得税15.315%+住民税5%)とされています。これは複数の解説で共通して説明されている整理ですが、税務の細部は状況によって変わりうるので、「一般的にはこう整理されている」という理解にとどめ、必要なら国税庁のタックスアンサーや税理士に確認するのが安全だと思います。
6. 両方を持つことはできるのか
結論から言うと、両方を持つことは普通にできます。投資信託(非上場)とETFは、どちらか一方しか選べない制度上の制約があるわけではなく、同じ証券口座の中で両方を保有している人は珍しくありません。
たとえば、毎月の積立は投資信託(非上場)で淡々と続け、ボーナスなどまとまったお金が入ったときだけETFを一括で買う、という組み合わせ方も考えられます。私自身は、まず投資信託(非上場)の積立で、価格を見ずに続ける感覚に慣れ、余裕が出てきたらETFを少しだけ試してみる、という順番のほうが落ち着いて続けられる気がしています。もちろんこれは一つの考え方に過ぎません。逆に、最初からETF一本で組み立てて満足している人もいるでしょう。
おわりに
投資信託(非上場)とETFは、投資信託という同じ看板を掲げながら、買い方は、値段を知らずに申込むのか、値段を見て売買するのか、というくらい違い、持ち方も、自動で再投資されるのか、自分で買い直すのか、というくらい違います。中身の指数が同じでも、日々の付き合い方はかなり変わってくる。どちらが合うかは、積み立てる金額の大きさ、使いたい制度の枠、手間をどこまで引き受けられるかによって答えが変わる問いで、誰にでも当てはまる正解はないように思います。
コストや対象商品の本数は変わり続けるので、決める前には金融庁や日本取引所グループ、各運用会社の最新資料を、一度自分の目で確認してみてください。この記事も、次に見直すときには数字を書き換えることになるはずです。