最近、資産全体を見直す投資日記の記事を書いたとき、仮想通貨の比率を「全体の1割ほど」と説明しました。あの記事では「私の投資は仮想通貨から始まりました、ちょうどバブルと呼ばれた時期で」とだけ触れて終わらせていましたが、今回はその「始まり」をもう少し詳しく書き残しておこうと思います。当時の自分の行動は、いま思い出しても少し顔が熱くなるようなものですが、だからこそ一度きちんと書いておきたいと思いました。これは反省文というより、当時の自分を観察する記録のようなものです。
1. 始まりのきっかけ
2021年の3月の終わり頃だったと思います。SNSやニュースで仮想通貨、とくにビットコイン以外の銘柄(アルトコイン)の話題が急に増えていました。「乗り遅れるな」という空気が画面の向こうから伝わってきて、私はその雰囲気に素直に押されました。
国内の取引所で口座を開き、値動きの性格が違いそうな銘柄をいくつか、少額ずつ、日をずらしながら買っていきました。今にして思えば、それぞれの銘柄が何を目指しているものなのか、ほとんど理解していなかったように感じます。理解していたのは「いま盛り上がっている」という一点だけでした。少額だから大丈夫、という言い訳を自分に何度も言い聞かせていたのを覚えています。
2. 広がっていった経緯
4月にかけて、私の行動は少しずつ範囲を広げていきました。別の国内取引所も使い始め、最初に買った銘柄とは違うものにも手を伸ばしました。取り扱いのある銘柄が増えるほど、「これも持っておいた方がいいのでは」という気持ちが自然と湧いてきます。
このときの心理を正直に言えば、投資判断というより収集に近かったと思います。手元の銘柄が増えることそのものが、何か前に進んでいるような感覚を与えてくれました。実際には前に進んでいたのではなく、ただ動いていただけだったのですが、当時の私にはその違いが見えていませんでした。
3. 下落相場でも止まらなかった5月
ここからが、この記事を書きたかった本当の理由です。
2021年5月は、仮想通貨市場全体が大きく崩れた月でした。ニュースでも連日そのことが報じられていて、私が持っていた銘柄も例外なく値を下げていました。普通に考えれば、ここで一度立ち止まる場面だったと思います。
ところが私の活動量は、むしろ増えていました。ちょうどその頃、イーサリアムとは別系統のBSC(Binance Smart Chain)というブロックチェーン上で、DeFi(分散型金融。銀行のような仲介者を介さずに貸し借りや取引ができる仕組み)に興味を持ち始めていて、下落の最中にもそちらの操作を続けていたのです。
自分の中にあった気持ちを分解すると、二つの層がありました。ひとつは「下がっているのだから、今が買い時なのではないか」という、それらしい理屈です。もうひとつは、もっと単純で、一度手を動かし始めると止められなくなる衝動でした。理屈の方はあとから貼り付けた言い訳で、実際に私を動かしていたのは後者だったのだろうと、今は感じています。
いちばんの反省点は、含み損を抱えたことそのものではありません。相場が下がっている最中に「一旦手を止める」というルールを、自分の中に持てていなかったことです。買い時かどうかを判断する以前に、判断できる状態に自分がいるかどうかを確かめる習慣がなかったのだと思います。新しい仕組みを触る楽しさと、値動きへの焦りが混ざったまま、動き続けていました。
4. 今の自分にどうつながっているか
あの経験があったから、というのは少し格好をつけすぎかもしれません。ただ、自分は雰囲気に流されやすく、動き始めると止まりにくい、という性質を身をもって知ったことは確かです。
だから今は、仮想通貨をポートフォリオ全体の一部、小さめの比率に抑えています。先日の記事で書いた「全体の1割ほど」という数字は、この2021年の記憶の上に乗っています。そして軸に据えているのは、NISAでの積立のように、感情の入り込む余地が少なく、淡々と続けられる資産クラスです。
これは仮想通貨を否定しているわけではなく、自分の性質と付き合うための配分だと思っています。もし私が冷静に手を止められる人間だったら、違う比率になっていたかもしれません。あの頃の自分に何か言えるとしたら、「買うか売るかより先に、今の自分が判断できる状態かを見てほしい」という一言になると思います。これは誰かへの助言というより、当時の自分への独り言のようなものです。それを言えるようになるまでに、ずいぶん遠回りをしました。
なお、この記事をきっかけに「あなたに合った投資商品を紹介します」といった個別のご連絡をいただくことがありますが、そうした勧誘やDMでのご相談には一切対応していません。判断材料になりそうな情報は、すべて公開の記事という形でしか発信しないようにしています。